近年、世界的に電気自動車(EV)の需要が急増しており、その中で重要な役割を果たしているのが 自動車用 E-アクスル(E-axle) です。E-アクスルは、モーター、トランスミッション、パワーエレクトロニクスをひとつのユニットに統合したシステムで、効率性、軽量化、省スペースを可能にする先進的な電動パワートレイン技術です。
市場調査によると、世界の自動車用 E-アクスル市場は 2020 年に約72 億米ドル規模で、2021 年から 2028 年にかけて年平均成長率(CAGR)31.4% で急成長する見通しです。2028 年には 657 億米ドル規模へと達すると予測されており、電動化シフトの中でも特に高成長が期待されています。
世界的に EV の販売台数が増加しており、とくにバッテリー式電気自動車(BEV)が市場を牽引しています。E-アクスルは軽量で高効率なため、主要自動車メーカーが積極的に採用を進めています。
欧州、中国、日本、米国などで排出ガス規制が強化されており、世界中で EV への移行が加速しています。政府による補助金や税制優遇などの政策支援により、E-アクスルの需要はさらに増加しています。
電動化パワートレインに対する投資が増え、Tier-1 サプライヤーや自動車メーカーが積極的に E-アクスル開発を進めています。高性能、小型化、統合化を目指した技術投資によって、市場競争がより活発になっています。

FWD(前輪駆動) の E-アクスルが市場をリード
高性能 EV では AWD(全輪駆動) の需要が急伸
RWD(後輪駆動)タイプも高級車やスポーツ EV を中心に採用が進む
乗用車向け BEV が最大セグメント
商用 EV(配送車、電動トラック、電動バスなど)でも E-アクスルの導入が加速
ラストマイル配送の電動化が商用セグメントで需要増を後押し
パンデミック初期は世界的に自動車生産が一時停滞しましたが、EV の販売は逆に増加しました。EV に対する需要が落ち込まなかったことから、E-アクスル市場も比較的早期に回復し、急速な需要拡大が続いています。各国の景気刺激策や EV 購入支援政策が市場回復を後押ししました。
アジア太平洋地域は E-アクスル市場の中で最も成長率が高い地域であり、とくに中国と日本が需要をリードしています。
日本市場は、政府のカーボンニュートラル政策、自動車メーカーによる EV シフト、充電インフラ拡大などが背景となり、2025 年には 560 億米ドル規模へ成長すると予測されています。国内メーカーの技術力と電動化戦略が、日本の E-アクスル市場成長の重要な基盤となっています。
自動車用 E-アクスル市場には多くの大手企業が参入しており、特に以下の企業が主導的な役割を果たしています:
Dana Limited
Robert Bosch GmbH
GKN Automotive
日本電産(Nidec)
ZF、コンチネンタル、シェフラー など
日本電産は特に中国 EV メーカーとの協力によって 200kW クラスの高性能 E-アクスルを供給しており、世界市場で存在感を強めています。
急成長が期待される一方、以下の課題も存在します:
高コスト:高度に統合されたシステムであるため製造コストが高い
EV 車両価格の高さ:EV の初期コストが消費者導入の障壁となる
レアメタルへの依存:モーターやパワーエレクトロニクスの素材価格が不安定
これらの課題を解決するため、企業は技術革新やサプライチェーンの最適化を進めています。
商用 EV の普及による大型 E-アクスル需要の増加
サプライヤーと OEM の協業によるコスト削減と量産化の進展
モーター・インバーター統合型システムの技術革新
小型・軽量・高効率化技術の進歩による競争力強化
自動車用 E-アクスル市場は、電気自動車の急成長、政策支援、技術革新により今後も高い成長が見込まれています。特に日本を含むアジア太平洋地域は電動化の中心地となっており、E-アクスルは次世代モビリティ市場の重要な鍵を握る技術です。
企業にとっては、技術投資・協業戦略・コスト最適化が競争力確保のポイントとなります。E-アクスル市場は今後も継続して注目すべき成長分野です。