サービスとしての銀行(Banking as a Service、BaaS)は、金融機関が自らのインフラや銀行サービスを API を通じて外部企業に提供する革新的なビジネスモデルです。これにより、非銀行企業でもアプリやプラットフォームに銀行機能を組み込み、顧客に高度な金融サービスを提供できるようになります。フィンテックの台頭とオープンバンキングの普及により、BaaS の重要性は世界的に高まっています。
Fortune Business Insights によると、BaaS の世界市場は 2024 年に約 195 億 6,000 万米ドルに達し、2025 年には 226 億 8,000 万米ドル、2032 年には 750 億 1,000 万米ドルまで拡大する見込みです。予測期間全体の年平均成長率(CAGR)は 18.6%と非常に高い水準です。
この急成長の背景には、デジタル金融サービスの普及、エンベデッドファイナンスの拡大、そして API 主導の金融インフラの進化が挙げられます。

企業は BaaS を活用することで、決済アプリやモビリティアプリなどの既存顧客チャネルに金融サービスを組み込み、効率的な顧客獲得を実現できます。
プラットフォームが保持する顧客データと BaaS の統合により、よりパーソナライズされた金融商品を提供でき、顧客ロイヤルティの向上につながります。
融資、決済、ウォレットなどのサービスをモジュール化し、企業が迅速にサービスを統合できる点が市場の拡大を後押ししています。
スケーラブルでコスト効率の高いクラウドベースの BaaS が急速に普及し、特にパブリッククラウドが市場成長をリードしています。
BaaS 市場には以下のような課題も存在します。
国ごとに異なる金融規制に対応するためのコストと複雑性
新規顧客オンボーディング時の KYC、AML プロセスによる業務負荷とコスト
高いセキュリティ基準を満たすための技術投資の必要性
これらは市場拡大の制約要因となっていますが、技術革新により解決が進みつつあります。
規制コンプライアンスの自動化:KYC・AML を自動化する API ソリューションが急増
非金融企業の参入拡大:小売、モビリティ、ヘルスケアなど多業界で BaaS 利用が進展
API ネイティブ構造の普及:金融機能を短期間で市場に投入できる仕組みが注目
これらのトレンドは今後 5~10 年で BaaS の発展を大きく加速させると期待されています。
BaaS 市場は以下の区分で分析されています。
サービス別:コアバンキング、支払い・送金、カード発行、融資、KYC/AML など
クラウド展開別:パブリッククラウド、プライベートクラウド
業界別:Eコマース、小売、交通・旅行、モビリティ、ヘルスケアなど
特に支払い・送金サービスは統合のしやすさから成長を牽引しており、パブリッククラウドの導入も急増しています。
アジア太平洋地域は予測期間中に最も成長が期待される市場で、2025 年には 54 億 7,000 万米ドル規模に達し、CAGR は 22.0%と予測されています。中国・インドに加え、日本でもキャッシュレス化、QR 決済、モバイルウォレットの普及が急加速しており、BaaS を活用した新しい金融サービスの需要が高まりつつあります。
日本企業はフィンテックとの提携により、埋め込み型金融を活用した新サービスを次々と展開しており、市場の成長余地は大きいと評価されています。
グローバル市場で中心的なプレイヤーには以下があります。
Tookitaki Holding
Finastra
Marqeta
Stripe
Solaris SE
Mambu ほか
これら企業は API 主導のプラットフォームや高度な金融インフラ技術を強みに、市場競争力を高めています。
BaaS 市場は、デジタル金融モデルの普及により今後も大幅な成長が見込まれます。API ベースの柔軟な金融機能、クラウド技術、非金融企業の参入拡大が市場を強力に牽引しています。一方で規制対応の複雑さなどの課題は残るものの、自動化やテクノロジーの進化によって克服されつつあります。日本市場でもフィンテック連携を通じた成長が期待され、今後の発展が非常に注目されています。