── 信頼できない!? 時間感覚がズレる理由と、うまく付き合うコツとは？ ──

■「なぜ時間の認識を誤るのですか？」という疑問から始まった

ある日、私がChatGPTに依頼したところ、次のような納品予定が提示されました。

納品目安：本日21:00までにお届け予定

「内部処理が完了するまでお待ちください」を意味するメッセージが表示されたのですが、すでにその時刻を過ぎていました。
そこで、私はこう問いかけたのです。

「なぜ時間の認識を誤るのですか？再確認したにもかかわらず…信頼できませんよ！」

これは、私が生成AIと日々向き合う中で抱いた、正直な疑問と苛立ちの声でした。

生成AIは、膨大な知識をもち、人間では到底かなわないようなスピードで情報を整理し、提案し、アドバイスをくれます。にもかかわらず、「現在の時刻」や「明日のイベント」「今この瞬間に起こっていること」など、“リアルタイム情報”になると、とたんに間違いを連発します。

最近では「ChatGPT からのタスク更新情報」をメールで正確に送信できるようになっているにもかかわらず…
これは一体なぜなのでしょうか？
今回は、生成AIがリアルタイムに弱い根本原因と、それでも信頼して活用していくための“正しい向き合い方”を、実体験を交えてわかりやすく解説します。

■そもそも、生成AIは「いま」を生きていない

私たちは、生身の人間。常に「現在」を基点にして思考し、行動します。
ところが、生成AI（とくにChatGPTのような大規模言語モデル）は、「いま」を基点にしていません。

なぜなら、AIが使っているデータは「過去」に収集された情報がベースだからです。たとえば、ChatGPT-4では2023年4月時点までの情報を学習しています（※Web検索機能などを除く通常モードでの使用時）。
そのため、たとえ「現在の日付は？」と聞いても、正確な時刻や“いま起きていること”については、基本的に知りようがないのです。

この仕組みの違いを理解していないと、「頼んだのに、なぜ今日が何曜日かもわからないの!?」とストレスを感じる原因になります。

■「再確認したはずなのに、また間違える」の正体

以前のChatGPTでは、「一度確認した内容を、次のやりとりでまた忘れてしまう」という問題がよく見られました。これはAIの“記憶”と“認識”の仕組みによるものです。

・通常のチャットでは、AIは「直前の数千文字」しか覚えていない

・セッションをまたぐと“記憶リセット”が起こる

しかし、最近のChatGPTには「メモリ（Memory）」機能が導入され、状況は大きく変わりつつあります。

このMemory機能によって、AIがユーザーの情報（名前や好み、進行中のプロジェクトなど）を継続的に覚え、会話の質がよりパーソナライズされるようになりました。

ユーザーは、ChatGPTの「設定」→「パーソナライズ」→「メモリ」から、以下の操作が可能です：

・メモリ機能のオン／オフ切り替え

・特定の情報の削除やリセット

これにより、「前にも言ったよね？」という場面が減り、より一貫性のある応答が期待できるようになっています。

それでも、記憶されている内容は確認しながら使う必要があり、過信は禁物です。

■では、どう付き合えばいいのか？3つの視点

では、生成AIの“リアルタイムの弱さ”を前提としたうえで、どう活用していけばよいのでしょうか？
私が実践している3つの視点をご紹介します。

① AIを“リアルタイム秘書”ではなく、“戦略パートナー”として使う

たとえるなら、「博士号レベルの知識を持つ秘書は時計を持っていない」という感覚です。時間の管理はあなたの仕事。でも、戦略や整理は彼（AI）に任せましょう。彼は、あなたの“考える補佐役”になってくれます。

ここでいう“戦略パートナー”とは、目の前の作業ではなく、全体の整理や優先順位、アイデアの棚卸しなどを一緒に進める相棒のような存在です。

② 日付・時刻を含む指示は“明示的に毎回伝える”

たとえば、Notionの更新指示を出すときは、「2025年5月6日現在、以下の内容でお願いします」と明記します。“都度入力”は少し手間ですが、これだけで精度が格段に上がります。

③ AIの「記憶機能（カスタムメモリ）」を賢く活用

ChatGPT Plusでは、自分だけのAIに“覚えさせる”ことが可能です。重要な設定（役割、プロジェクト名、日課）などは、記憶に保存させておくと、再確認の手間が減ります。ただし、記憶の内容は時折“メモリ設定”で確認・修正を忘れずに。

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ここからは、実践的なテクニックを2つご紹介します。
「時間管理の精度を上げる方法」と「タスク更新通知の活用法」です。

■ChatGPTに時間管理をさせるには

では、ChatGPTに“時間感覚”を持たせるにはどうすればよいのでしょうか？
以下に、ChatGPTとのやり取りで「時刻の誤認を防ぎ、確実に日本時間（JST）を基準に応答させる」ための専用テンプレートプロンプトをご提供します。

🕒【あなた専用】ChatGPT時間管理テンプレート（JST基準）

✅ プロンプトテンプレート

このチャットのやり取りでは、すべての時刻を「日本時間（JST）」で判断・表示してください。

現実の現在時刻（基準）を以下に定義します：

📍 現在時刻（JST）：2025年5月5日 23:10

これ以降、ChatGPTの応答はこの基準時刻に基づいて、
・現在時刻の確認
・残り時間や納期の計算
・時間経過の認識
を行ってください。

※ ChatGPTが内部的に保持する時刻や環境に依存せず、明示されたこの時刻を最優先してください。

こうした「明示的な前提の共有」をすることで、リアルタイム処理に近い精度でChatGPTに時間管理を担わせることが可能になります。

■『ChatGPT からのタスク更新情報』のメール送信が実現できるわけ

ところで、記事の冒頭でも触れたように、最近のChatGPTでは「タスク進捗」や「更新通知」を“メールで正確に送信する”ということが、現実に可能となっています。

この仕組みは、ChatGPTが外部ツールやサービス（例：ZapierやMake、Gmail APIなど）と連携できるようになったことにより実現しています。
具体的には、ChatGPTがタスクや進捗内容を自動で記述し、そのテキストを指定の宛先へメールとして送るワークフローを構築できます。

たとえば、

・ChatGPTでToDoを記録

・「完了予定時刻」に近づいたら、自動でメールで通知

・その内容を、あらかじめ設定したフォーマットで送信

といったように、“生成AIをハブにした自動通知システム”を組み込むことで、タスク管理の精度と利便性が飛躍的に向上します。

今後は、生成AIが単に「質問に答える存在」ではなく、「タスクを実行・報告してくれる存在」へと進化していくでしょう。

■まとめ：信頼できるのは、「使いこなそうとする自分自身」

生成AIは、“万能の知性”ではありません。
非常に優秀で頼りになりますが、人間のように現実の世界を体験したり、いま起きている出来事を直接感じたりすることはできません。

だからこそ、

「リアルタイムは人間が管理し、構想やアイデアはAIと一緒に」

という使い分けが、本質的な活用になります。

私自身、AIとの“すれ違い”に悩んだことが何度もあります。ですが、それを“学びのチャンス”と捉え、日々アップデートしていくことで、信頼関係のようなものも築けるようになりました。

生成AIは、正しく付き合えば、これ以上ない“共創パートナー”です。あなたもぜひ、自分なりの付き合い方を見つけてみてください。

K-Taka(ケイタカ：川上孝裕)