競馬ファンなら一度は耳にする「日本の高速馬場」。
でも、ヨーロッパの芝と比べて何がどう速いのか、具体的に説明できますか？
実は、芝の種類、水はけ、そして芝丈まで、様々な違いがあるんです。
この章では、日本とヨーロッパの芝の具体的な違いを分かりやすく解説し、それぞれの馬場が馬の走りやレース展開にどう影響するのかを具体例を交えて説明していきます。

まず、芝の種類を見てみましょう。
日本の競馬場では主に野芝が使用されています。
野芝は、葉が大きく、密度が高い品種であり、保水性が低いです。そのため反発しやすいため、馬がスムーズに走ることができ、高速馬場になりやすいという特徴があります。

一方、ヨーロッパでは洋芝が主流です。
洋芝は野芝に比べて葉が長く、柔らかく、芝自体にクッション性があります。
また根の部分がクッションのようになるため、反発しにくく保水性が高いです。
そのため、日本の馬場のように速いタイムは出にくく、パワーやスタミナが求められる馬場になりやすいのです。

次に水はけの違いについてです。
日本の競馬場は水はけが非常に良く設計されています。
芝生の下にも層があり、排水性を高めています。
改修後の京都競馬場は、極限まで排水性が高まっており、かなりの雨が降っても3時間後には、良馬場＝走りやすい馬場に変わるといわれています。
これは、日本の気候が梅雨などの雨季があるため、レースをスムーズに行うために必要な工夫です。
優れた水はけのおかげで、雨が降っても馬場状態が大きく変化しにくく、比較的安定したコンディションでレースが行われます。

一方、ヨーロッパの競馬場は、水はけが日本ほど良くない場合が多く、雨が降ると馬場が重くなりやすい傾向があります。
　ヨーロッパは日本の競馬場とは違い、山の中や平原にそのままコースを作っている場合が多く、ある意味自然に近い状態で存在しています。
また気候的に雨季がある国が多いため、雨が非常に降りやすいです。
そのため、馬場状態の変化に対応できるパワーやスタミナのある馬が有利になることが多いです。

最後に芝丈ですが、これも大きな違いの一つです。
日本の芝は短く刈り込まれており、馬が走る際の抵抗が少ないため、スピードが出やすくなっています。まさに「高速馬場」と呼ばれる所以ですね。

ヨーロッパの芝は日本に比べて長く、また、柔らかく、馬の脚への負担が大きくなります。
そのため、瞬発力よりも、パワーとスタミナが求められるレース展開になりやすいのです。

例えば、2022年のフランスで行われた凱旋門賞を見てみましょう。そのレースで19着に破れた日本馬のドウデュースはその年の日本ダービーを勝利するなど高速馬場で実績を残してきた馬です。しかしパワーとスタミナが求められるロンシャン競馬場の馬場では、うまく走ることはできませんでした。
日本に帰国後、2023年には有馬記念、2024年(12/10現在)には天皇賞秋とジャパンカップを制覇をするなど、日本の高速馬場の方が好成績を残していることが読み取れます。

一方、2012. 2013年と凱旋門賞を2年連続2着に入線しているオルフェーヴルは、国内ではクラシック三冠を達成しており、2000m〜3000mのレースを勝っています。その中でも日本ダービーでは、豪雨が降り注ぎドロドロ状態の不良馬場を勝ち切るなど、パワーを証明しています。また菊花賞という長距離のレースを勝っており、スタミナがあることも証明されています。

このように、馬場の特徴と馬の適正を理解し、適切な戦略を立てることが、競馬で勝つための重要な鍵となるのです。

血統から読み解く！馬場適性の秘密

血統と馬場適性の関係は、競馬予想において非常に重要な要素です。
日本の馬場、ヨーロッパの馬場に適した血統の特徴を理解することで、馬券的中率を上げるための大きなヒントが得られるでしょう。

まず、日本の高速馬場に適性を持つ血統としては、サンデーサイレンス系が挙げられます。
サンデーサイレンス系はスピードと瞬発力に優れており、短距離から中距離のレースで高いパフォーマンスを発揮します。
また、ミスタープロスペクター系こと、ミスプロ系も日本の馬場に適性が高いと言われています。
ミスプロ系はスピードを備えており、幅広い距離で活躍できるのが特徴です。基本的にミスタープロスペクターの血が入っている場合はスピードが確保されていると捉えてもいいでしょう。

一方、ヨーロッパの馬場、特に芝の中長距離レースに適性を持つ血統としては、サドラーズウェルズ系が代表的です。
サドラーズウェルズ系はスタミナとパワーに優れており、重馬場やタフなコースでも力を発揮します。
1999年に凱旋門賞2着に入線している、日本馬のエルコンドルパサーは、母の父つまり母方の祖父にサドラーズウェルズがいます。
凱旋門賞などヨーロッパのビッグレースで好成績を残していることからも、その適性の高さが伺えます。
その他、ニジンスキー系やダンジグ系もヨーロッパの馬場に適性を持つ血統として知られています。

血統から馬場適性を見抜くためには、それぞれの血統の特徴を理解することが重要です。
例えば、サンデーサイレンス系はスピードと瞬発力に優れているため、日本の高速馬場では有利ですが、スタミナが求められるヨーロッパの馬場では苦戦する可能性があります。
逆に、サドラーズウェルズ系はスタミナとパワーに優れているため、ヨーロッパの馬場では有利ですが、スピードが求められる日本の馬場では本来の力を発揮できない可能性もあるのです。

競馬は血統だけで決まるわけではありませんが、馬場適性と血統の関係性を理解することは、馬券予想において非常に役立ちます。
様々な血統の特性を学び、馬券予想に役立ててみてください。

武井カイル