競馬中継で「1000m60秒」なんて言葉を聞いたことありませんか？
これが、競馬におけるペースを表す数字なんです。
「1000m何秒」というのは、1000mを走るのにかかった時間を示しています。
2000m以上のレースにおいて1000m60秒速すぎず遅すぎずの平均的なペースとなっています。
つまり、60秒を基準に数値が低いほど、速いペースでレースが展開されているということです。

例えば、1000m58秒は1000m60秒よりも速いペースです。
逆に、1000m62秒は1000m60秒よりも遅いペースになります。
2000m以上のレースでは60秒を基準に数秒の違いで早いか遅いかの違いが分かります。
基本的には1000mを60秒を超えたら遅い、60秒を切ったら速いといっていいでしょう。
2000m未満のレース、特に1600mでは半分、800mの位置で45秒を基準に遅いか速いかを判断するといいでしょう。

では、速いペース、遅いペースの基準って一体何なのでしょうか？
実は、競馬のペースには絶対的な基準はありません。
コースの距離や馬場状態（芝の状態、ダートの状態）、そして出走馬のレベルによって、速いペース、遅いペースは変わってきます。

例えば、良馬場の芝1600m戦で1000m58秒は速いペースと判断できます。半分の800m(実況では半マイルでは45秒を基準に切っていたら速いと呼んでいいでしょう。
しかし、重馬場のダート1000m戦で1000m60秒は平均的なペース、もしくは遅いペースと判断されることもあります。
馬場状態が悪ければ脚元が悪く走りにくいため、馬は速く走れません。
また短距離戦であれば全体的な距離が短いため全体的なペースも速くなります。

さらに、出走馬のレベルも重要な要素です。
G1レースのようなハイレベルなレースでは、全体的にペースが速くなる傾向があります。
一方、下級条件のレース、未勝利戦や1勝クラスでは、全体的にペースが遅くなる傾向があります。

このように、ペースの判断は様々な要素が絡み合ってきます。
競馬新聞や競馬サイトには、過去のレース結果やラップタイム（各区間ごとのタイム）が掲載されています。
これらの情報を参考に、過去のレースと比較することで、今日のレースが速いペースなのか、遅いペースなのかを判断する材料にしましょう。

具体的なレース例を挙げると、2023年の天皇賞(春)は、良馬場の芝3200mで行われ、1000m通過タイムが約59秒でした。
これは長距離戦としては非常に速いペースで、後方の刺し・追込による瞬発力勝負となりました。中断から仕掛けて、差し切ったジャスティンパレスが勝利しました。

このように、ペースを理解することは、競馬予想において非常に重要です。

ペースで有利・不利が変わる！？展開を読むための３つのポイント

ペースによって、有利になる馬、不利になる馬がいます。
逃げ馬、先行馬、差し馬、追い込み馬、それぞれの脚質に適したペースを理解することで、レース展開を予想できるようになります。
具体的なシナリオを基に、ペースがレース結果にどう影響するかを紐解きます。

ポイント1：速いペースの場合

速いペースのレースでは、スタミナが重要になります。
更には中団や後方で待機して、スタミナ・体力を温存していた馬が有利になります。
逃げ馬や先行馬は、序盤からハイペースで飛ばすため、スタミナを消耗しやすく、ラストスパートに使う体力がなくなり、終盤にバテてしまう可能性が高くなります。
逆に、差し馬や追い込み馬は、スタミナを温存しながら後方からレースを進めることができるため、ラストスパートに使える体力が残っているため、終盤に有利になります。
2000m以上の中長距離戦では速いペースで先行馬がバテやすく、差し馬や追い込み馬が有利になる傾向があります。
馬場状態が重い場合は、地面を蹴る力が伝わりにくいため、後方の馬は瞬発力を出しにくく、前につけていた馬が有利になります。

ポイント2：遅いペースの場合

遅いペースのレースでは、先行研究力が重要になります。
ペースが遅いと、前に付けている馬の体力が残っているため、ラストスパートを保ちやすく、スタミナが残っているため、前が残りやすくなります。
つまり逃げ馬や先行馬は、自分のペースでレースを進めることができ、最後の直線で勝負をかけることができます。
逆に、差し馬や追い込み馬は、遅いペースで先行集団との差が詰まりにくく、最後の直線で追い上げるのが難しくなります。
1200m以下の短距離戦や、馬場状態が良い（良馬場）場合は、特に瞬発力が重要となるため、遅いペースで逃げ馬や先行馬が有利になる傾向があります。

ポイント3：平均的なペースの場合

平均的なペースのレースでは、展開を読む力や騎手の腕が重要になります。
逃げ馬、先行馬、差し馬、追い込み馬、どの脚質の馬にもチャンスがあります。
そのため、レース展開をしっかりと分析し、どの馬が有利なポジションを取れるかを予測することが重要になります。
騎手の腕も重要で、馬群を捌くのが上手い騎手や、絶妙なタイミングで仕掛けられる騎手が乗っている馬は、有利になります。
騎手の経歴や実績をチェックしてみましょう。

脚質とペースの絶妙な関係〜馬の特徴を見抜くコツ〜

逃げ馬が得意な馬は、基本的には遅いペースで力を発揮しやすいです。
なぜなら、自分のペースでレースを進めることができ、スタミナを温存しながら最後の直線で勝負をかけることができるからです。
しかし、速いペースのレースでは、スタミナを消耗しやすく、終盤にバテてしまう可能性が高くなります。
また、遅いペースのレースでは、他の馬にマークされやすく、最後の直線で抜け出すのが難しくなることもあります。

先行馬が得意な馬も、逃げ馬と同様に、遅めなペースで力を発揮しやすいです。
先行馬は、逃げ馬のすぐ後ろにつけることで、風よけ効果を得ながらレースを進めることができます。
そのため、スタミナを温存しながら、最後の直線で良いポジションにつけることができます。
しかし、速いペースのレースでは、逃げ馬と同様にスタミナを消耗しやすく、終盤にバテてしまう可能性があります。

差し馬が得意な馬は、速いペースのレースで力を発揮しやすいです。
なぜなら、先行馬が速いペースで飛ばすことで、スタミナを消耗してバテてくるため、後方から追い上げて勝利するチャンスが生まれるからです。
また、平均的なペースのレースでも、最後の直線で鋭い末脚を発揮できれば、勝利を狙うことができます。
しかし、遅いペースのレースでは、先行集団のスタミナが残っており、差が詰まりにくく、最後の直線で追い上げるのが難しくなります。

同じく追い込み馬が得意な馬は、速いペースのレースで最も力を発揮しやすいです。
先行馬がバテてくる終盤に、一気に追い上げて勝利するパターンが得意です。
また、平均的なペースのレースでも、展開が向いてスムーズに馬群を捌ければ、勝利を狙うことができます。
しかし、遅いペースのレースでは、差し馬と同様に、先行集団との差が詰まりにくく、最後の直線で追い上げるのが非常に難しくなります。

それぞれの脚質には得意なペース、不得意なペースが存在します。
競馬新聞や競馬サイトで、過去のレース結果やラップタイムを確認し、馬の得意なペースを見極めることが、馬券購入に役立つ実践的な知識となります。

武井カイル